ルワンダの伝統アート イミゴンゴ
その始まりは諸説ありますが、1800年代前半に当時存在していたギサカ王国のカキラ王子が作り始めたと言われています
カキラ王子にまつわる言い伝えでは特に潔癖だったエピソードが目立ちます
・大皿料理をみんなでシェアするのが普通だった中で、彼だけ自分専用の食器を使っていた
そしてその食器を保管する専用の小屋まであった
・雨の後のぬかるんだ地面を歩きたくない、と乾くまで岩の上に立って待っていた
・朝から昼まで水浴びばかりしていた
・昼から夜まで掃除ばかりしていた
そんなカキラ王子が「なぜイミゴンゴを作り始めたのか」は本人のみぞ知るですが、自分の家の室内の壁に柄を描き始めたのが最初とされています
家に人を迎えた時に、より歓待の意を表すためのしるし
現段階の調査では、魔除け的意味合いや、祈りのシンボル、呪術用として使用されていた証は見つかっていません
しかし、こういうことはどれもこれも「今の時点で」のはなし
見つからないからといって「無い」ということにはできません(し、したくないという思いもあります)
分かった
そうだ
それだ
と決めきった時点でそれは固化してしまい、それ以降にくる情報や兆しへの間口が狭くなることがあるなと感じています
不確かのままぶら下げておくことは気持ち悪いこともありますが
どれもこれも、ありうる
どれもこれも、ないかもしれない
そういう態度で調査に当たることが今の私にはしっくりきています
ギサカ王国は1854年まで存在し、その後ルワンダ王国の領土となり
現在のルワンダ共和国になりました
彼らは独自のことばを持ち(ギサカ語)、独自の文化を持っていました
そのうちの一つがイミゴンゴです
イミゴンゴはルワンダ王国には存在しなかった文化ですが、現ルワンダ共和国のエリアに発祥地が存在することから便宜上ルワンダの伝統アートとされています
王国は消滅しても文化は生き続ける
イミゴンゴの柄の名前や、その周辺のことにたくさんのギサカ語が弾けています
イミゴンゴの創始者カキラ王子が暮らした場所はどんなところか
現在、特に家の跡などは残っていませんが、その場所を訪ねることはできます
ルワンダ南東部キレへ郡のメインのバス停からバイクタクシーで約1時間半
丘をくだり、のぼり
草原を抜け
仔牛のスマイルを見て
赤い壁の家々を通って
着いたこちらがレメラ山
カキラ王子が暮らしていた場所です
(緑の部分は主にバナナの畑)
ここはニャルブイェというエリアにあり、その名の由来は
ニャ(〜の場所)+ イブイェ(石、岩)= 石の場所、岩の場所
大きな岩がごろごろあります
人間の身長をはるかにこえるサイズのものも
年月
人は暮らしていません
岩の上に立つと独特な風が迎えてくれます
少し目を遣ると、もうそこは隣国タンザニア
標高1,680m
カキラ王子が実際に住んだ家があったであろう場所は
現在ナッツ畑となっています
ホテルが建つ、という話も出ていましたが長年着工せず
工房を訪れる度にこのレメラ山に足を伸ばして
起源の空気を吸い込むことが、楽しみの一つです
何を思ってイミゴンゴを作っていたのか
この景色に囲まれながら何を受け取っていたのか
この空から
この風から
そしてこの岩から
オリジンに触れることは、人を枠の外に連れ出してくれます
(調査:masako kato)